目が赤いが、落ち着いたらしく、
「今日はありがとうございました」
と、幽霊はぺこりと頭を下げる。


「最後に、あれ乗りたいです」
幽霊は、観覧車を指さした。

「はじめてきました」
「遊園地か?」
「はい」


「最後に来れてよかったです」

「なあ・・」
寺崎の表情はフっと変わる。
寺崎に人格が交代したらしい。

「影無君。君の言いたいことは分かる。
だけど、これ以上、俺の体に彼女を入れていたら。
俺が死ぬ。
そしてもし、彼女がこの後成仏しなかったら、
一生成仏できない。
二度と人間へは生まれかわれない。
何ごとにも期限があるんだ。
俺は彼女に相談された時から、
近い内に成仏できなかったら、
一生この世に留まることになると分かっていた。
だから、助けなくては、ってなおさら思ったんだ」


寺崎の顔が、女っぽくなる。
「もし、この世にとどまれば、私はずっと幽霊です」