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カイルが来てもう1ヶ月。



未だ花音は願い事を口にしてはいない。



いや、正確には。



口に出来なくなった。





名残惜しくなってしまったのだ。





願い事を口にしてカイルがこの世界から居なくなってしまう事が。



自分の前から居なくなってしまう事が。



両親の時には「さよなら」も「待って」も言えなかった。



言えないままに二人は花音の前から居なくなった。



だけどカイルは。



自分さえ願い事をしなければ傍に居る事が出来る。




『解いた人間の願いを叶えるまではずっと傍に居なきゃいけないって魔法もかけられてる』




いつか言ったカイルの言葉は花音の罪悪感を募らせる。