本気で願った事しか叶わない、なんて。



花音にとっては酷く難しい事のように思えてしまう。



施設を出てからずっと一人で生きてきたのだ。



欲しい物が見つかれば普段以上に働いてお金を稼いだし、働きづくめで恋なんてものとは無縁だったが、取り立てて恋人が欲しいと思った事もない。



つまり、平坦かつ平穏な人生。



今、花音はその渦中にいる。



孤独を淋しいと思う反面、孤独なら誰も失う事は無い。




表裏一体となるメリット・デメリット。



その最中に居る花音は特別幸せでは無いものの、特別不幸でも無い。



そんな花音が、「何かを本気で願う」なんて。



花音自身にしてみれば、どうにも不可能な事のようにも思えてしまうのだ。





「…願い事をする権利を放棄とかは出来る?」




どうせ願い事一つ決められないなら、放棄してしまおう。



そう考えた花音に再び撃沈の言葉が耳をよぎる。




「無理だ」