「…父上は。母上の事愛してた?」



「もちろんだ」




ポツリと漏れた質問に即答された返事。



聞かずにはいられなかった。




「…今の母上の事は?」



「……私が心から愛したのはローザだけだよ、」




そう呟いた父の表情を見る事が出来なかったのは。



呟かれた声が僅かに震えていると気付いてしまったから。





二人が再度沈黙に包まれた時、部屋の奥から甲高い赤ん坊の泣き声が聞こえてきた。





「…さ、行こうか」





父に背中を押され、カイルはゆっくりと部屋の中へと足を踏み入れる。