「あぁ。凄く苦しそうだったよ。だけどローザは決して弱音を吐かなかったと産婆に聞いたな」




昔を懐かしむ様に穏やかな表情をした父。



そんな父の表情を見るのは本当に久しぶりだった。




「…出産て。実際に産む人と外で待つ方じゃ全然違うんだね。温度差が激しいというか」




それを聞いた父がクスリと笑うのを首を傾げて目にすれば父は穏やかな表情のままに言葉を紡いだ。




「…確かに今はそうだな。だけど、お前が生まれる時はそうでもなかったんだぞ?私はお前が早く生まれんかと、この部屋の前を何時間もずっと行ったり来たりしていた。従人にも何度も宥められて。ようやくお前の泣き声が聞こえた時は部屋の中に慌てて入りこんだぐらいだよ」




父上がそんなに慌てた?




そう疑問に思うも、父は嘘を吐いている様子には見えない。