「…ごめんね、カイル…」




最後の方は最早聞き取れないほどの小さな声になり。



その手を強く握っても、返される力はもうほとんど感じられない。




「…あ、なたの…、母親になれ、て……」




“幸せだったわ”




口の動きだけでカイルにそう告げた後、母は静かに目を閉じた。





「…は、はうえ、…嘘、だよね…?う…そって…嘘って…嘘だって言えよ!」





力の入らなくなった手を更に強く握り締めても、もう何の応答もない。



たった今までは確かに母の意志で自分の手を僅かながらにも握ってくれていたハズなのに。