資料をまとめる作業は簡単。
1ページ目から4ページ目まであるプリントを上から重ねてホッチキスで止めるだけ。
なのに1人でやるとこの単純作業はどうにも時間がかかる。

少し大きいプリントなので教室の机を並べて作業することにした。
ガラガラという机の音が妙に響き渡る。

やっぱ1人は大変だなぁ…

そんな事を感じていると、

「おい。」
「!!」

突然聞こえた声に私はビクッとした。
教室の外の廊下から黒澤君がこっちを見ている。

「黒澤君!あれ…ミーティングは?」
「終わった。今日は練習なし。お前、なにやってんの?」
「これは年間行事予定表のクラス分の資料をまとめてるの。」

教室に入ってきてプリントを見ながら尋ねる黒澤君に笑いながら答えた。

「黒澤君、忙しいでしょ?だから私やるから大丈夫だよ!!」

するとどうだろう、気を利かせたつもりが黒澤君はみるみる不機嫌そうな顔になっていった。

「…俺もする。」
「え?」

あまり聞こえなかった声を聞き返すと黒澤君は向かい合わせでひっつけている机の椅子に座った。

「委員会に出なかった分、俺やるから。お前もう帰れ。」
「え、でも…」
「『でも』じゃなくて帰れ!」
「はいっ!!」

あ……
黒澤君の声に反射的に反応してしまった。

少し恥ずかしい気持ちを抑えて机からカバンを取り、最後に一言黒澤君に言った。

「黒澤君、ありがとう。」

それだけ言って私は教室を出た。

黒澤君、口は悪いけど…もしかしていい人なのかもしれない。
そんなことを感じながら。