『翔ちゃん電話終わった感じ?』
『そんな感じ。』
『そしたら翔ちゃんに代わってくれない?』
『…わかった。』
円香が先生と何を話すのか気になるけど、このままじゃいつまでも電話切れないし…
しょうがないか!
「…先生、円香が話したいことあるって。」
「俺?」
「よくわかんないけど、代わってって。」
「何だろ?」
先生は不思議そうに、あたしの電話を手にした。
『もしもし』
ほんと円香何話すんだろ…
あー気になる!!!
そう気にしている間も、先生と円香の会話は進んで行く。
『…まぁね。それより話したいことって?』
先生から早速本題を切り出した。
『……わかってるよ、大丈夫。』
何が大丈夫なの?
『はいはい。じゃあな。』
そして先生は電話を切った。
「はい、ありがとう。」
先生があたしに携帯を返す。
「円香何て?」
気になりすぎて思わず聞いてしまった。
「“明日香を泣かせたら許さないからね”ってさ。」
円香が言いたいことってこれだったんだ…
気にしすぎたあたしがバカだった…
「やっぱり円香ちゃんには負けるよ…」
「…何で?」
「あーいや…いつか教えるよ。っていうか俺“大丈夫”とか答えたけど、既に泣かせてるしね。」
苦笑いの先生。
確かに泣いたけど、正直もうどうでも良い。
「あれは円香に黙っておきます。」
「お願いします。」
「あっすーベッド使って。」
「あたし床で良いです。」
「遠慮するなって。」
「してません!ほんと床でいいです!それじゃなかったら自力で帰ります。」
「………」
よし、勝った!
ん?何の言い合いかって?
実は終電がなくなって、先生の部屋に泊まることになっちゃいました!
それで、あたしが先生のベッドで寝るか、床に布団を敷いて寝るか…
終電を逃したとはいえ、タクシーっていう手段が残ってるんだけど、なぜかタクシーは危険だって先生は言い張るし…
無理な理由ばかりつけて、言い訳して…
先生は何としてでも、あたしを泊まらせたかったみたい。
だから“帰る”と言ったあたしの勝ち!
「ほんとに床でいいの?」
ベッドの横に布団を敷きながら、先生は聞いた。
「良いんです!」
先生のベッドで寝るとか絶対無理だから!
お泊まりって時点でもうアウトなのに…
「はい、できた。もうこんな時間だし、寝よ。」
時計はもうすぐ1時になろうとしていた。
寝れる自信ないけど、明日も学校だし、とりあえず布団にだけ入っておくか。
「明日何時に家着けばいい?」
「7時半前なら大丈夫です。」
「わかった。それじゃあ、おやすみ。」
「おやすみなさい。」
そして先生は電気を消した。
暗く静かになった部屋には、時計の秒針の刻みだけが聞こえてくる。
いつもなら、布団に入るとすぐ寝ちゃうのに…
しかも特に今日は遊んで疲れてるはずなのに…
……全く眠くならない。
目を瞑って寝る努力はしてるけど、全く効果なし。
どうしよう…
先生はもう寝たのかな…?
布団に入って30分が経った。
完璧先生は寝た様子。
だけどあたしは未だ寝れずに、寝返りばかり打っていた。
すると突然、
「まだ起きてるの?」
とっくに寝ただろうと思った先生が、部屋の灯りを点けた。
「先生もまだ起きてたんですか?」
「なんか寝れなくて。あっすー寒くない?」
「今は大丈夫です。」
「そっか。ちょっとこっち来て。」
あたしはもぞもぞと布団から出て、手招きする先生の元へ行った。
「……寒い」
布団から出ると意外に寒くて、一瞬体がブルッと震えた。
「寒い?それならちょうどいいや。」
ちょうどいい?
「俺も寒かったし…一緒に寝よ?」
………へ??
一緒に寝る??
無理無理無理!
もっと寝れなくなっちゃうじゃん!
「大丈夫だよ、何もしないから。」
な、何もしないって…!
とりあえずそういうことじゃなくて……
「嫌?」
「いえ…」
嫌なわけないよ。
むしろ嬉しいけどさ…
心の準備?って言うのがほしいじゃん!
「嫌じゃないなら寝ようよ。」
ベッドの端に身を寄せた先生は、あたしのために空けたであろうスペースをポンポンと叩いた。