私は、引きずられるルカ様に向かい軽く一礼した。
その時――。
「シキ」
名前を呼ばれ、すぐにルカ様に視線を向けた。
「茶をいれろ」
サラ様に襟首を掴まれたままそう言い、また、サラ様に引きずられて完全に部屋から出て行った。
はいはい。
かしこまりました。
私は見えなくなったルカ様に向かい、もう一度一礼した。
……ん?
待てよ?
今のタイミングでお茶をいれていいということは……
ルカ様、サラ様とお茶を飲みたいのではないですか。
口では、『近寄るな』とか『同じ部屋で食事をしたくない』とかおっしゃっているくせに。
少しは可愛いところがあるじゃないですか。