俄然張り切るのは、女子たちである。
その妙に熱いテンションにはついていきづらいが、真琴の演技に寄せる期待は高い男子たち。

窓際最後尾の席の真琴を放って、教室内の熱は上昇の一途を辿っていた。

騒がしさに少し眠気が飛んだ直姫が、くるりと体ごと振り返る。


「ふ、……王子様だって、真琴。がんば」
「ちょ、直姫、なんで笑うの! ていうか自分は頑張らないの?」
「頑張らないよ。もう一番暇そうな……村人Aとかでいい」
「……劇だったらなんでも村人が出てくると思ってない?」


直姫には、話し合いに参加する気はさらさらないらしい。
失せきらない眠気のせいで、少しぼうっとしている。

そんな友の顔と、どんどん混沌化していく話し合いの様子を見比べて、真琴は唇を尖らせた。


「まあ、直姫に演技なんて……あれ、でも、意外とできるのかな?」
「意外とってなに、失礼だな……ふあぁ」


直姫はそう言って、欠伸を一つ。

考えてみれば直姫だって、素顔は四六時中ぼんやりした、無表情無感動無愛想の三冠女王である。

それがクラスメイトや教師に接する時だけは、普通の少年のように微笑んだり、眉尻を下げたりするのだ。
さりげなくて自然なぶん、もしかしたら下手な役者よりも演技は上手いのかもしれない。

真琴がそう思って、首を傾げたときだった。


いつの間にかクラスのほぼ全員が集まった巨大な輪の中から、どよめきが上がる。
どうやら、話し合いに進展があったらしい。

麗華が教壇の上へ駆け戻って、ひらりと振り向いた。