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「本名はサトキチ、ここではりよと名乗ってるが。正真正銘、志都美家の一人息子だ」


居吹に言われて履歴書の名前欄を見れば、ふりがなは確かに“しずみさときち”と振られている。

遅れて真琴と恋宵の間に顔を出した直姫は、平然とした顔で「ほら、だから言ったじゃないですか」と言い放って、また里吉に睨まれていた。


「お、男……」
「男……」
「男なんだ……」


呆けたように繰り返してから、彼らは、改めて里吉をまじまじと観察する。

顔立ちは至って整っていて、言われてみれば中性的、という程度だ。

なにしろこの生徒会には中性的どころか、異性装に優男に美形アイドルに極度の女顔まで、全く基準にならない顔が揃っているのだ。
少しくらい切れ長の目が凛々しくたって、首が逞しくたって、手のひらが大きくたって、そういう子もいるかもね、で片付けられる問題である。

それよりも、長く手入れの行き届いた睫毛や、ゆるくパーマがかけられた艶やかな黒髪、薄く施された化粧などを見て、言われなくても男だなんてわかる人間はそういないだろう。

完璧に作られた“美少女”っぷりに、夏生がぼそりと「……オカマ?」と呟いた。


「いやですわオカマなんて。ちょっと女の子の格好と、美しいものが好きなだけです」
「……そう……」


いくら個性派揃いの悠綺高校といっても、“そっち系”までは初めてだったのか、夏生や紅もさすがに引き気味だ。
そんな彼にけろりと笑って見せる、りよ改め、里吉(さときち)。