全員の視線が集まる扉の前には、暗めの赤い髪と、白いスーツ。
今日のシャツは濃いグレーだ。


「あ、居吹だー」
「なんか久し振りですね、竹河先生」
「おい佐野! 今日来た留学生、お前らのクラスなんだってな!?」


やけに慌てて入って来た居吹は、生徒会顧問のくせに、この生徒会室に来るのは数週間振りだ。
しかも以前来たのは確か、職員室だと怒られるからと、わざわざ煙草を吸いに来たのだったか。

そしてなぜか開口一番、彼らにとってはとてもタイムリーな、一年B組への転入生の話。


「それならほら、ちょうど今そこに」


聖が、いまだ直姫と口喧嘩をするりよを指す。
口喧嘩とはいっても、面倒くさそうな表情であしらう直姫にりよが食って掛かっているだけなのだが。


「ちょうどいい、ちょっとこれ見てみろ」
「え?」


居吹が来たことにも気付いていないだろうりよを無視して、彼が夏生たちの前に突き付けた紙には、顔写真やずらりと並んだ記入欄がある。


「履歴書?」


不思議に思うが、一番目立つ左上の欄に、ついさっき名刺で見たばかりの名前を見つけた。