「質問いいですかー」
「どうぞ」
「ところでさ、その、りよちゃんが会いたかった相手ってのが、夏生?」
「指差さないでくださらない、お行儀が悪いわ」
「で、どうなの」
「そうですわ、私、夏生様にお会いするためにイギリスから参りましたの!」


不意に早変わりの手品のように華やかな笑みを浮かべたりよに、誰もが感じたのは、いやな予感だけだ。


「……な、なんでまた」
「そんなの決まってますわ、少し考えればわかりますでしょう?」


相変わらず夏生以外にはぞんざいな物言いのりよは、完成された上目遣いを彼に送る。


「私、夏生様を、心からお慕いしておりますの」


にっこりと天使のような笑顔と、いくらか音の上がった語尾。

当の夏生はというと、それはもう興味など皆無というように、明後日の方向を向いている。
生徒会室の扉が閉じた瞬間からいつもの様子だが、どうせ二週間ちょっとでイギリスへ帰る彼女に対して、外面を取り繕う必要はないと判断したのだろうか。

しかし周りなんて少しも見ていないりよの方は、そんな彼の態度にも気付かないようだ。