「西林寺直姫……周囲の目はうまく誤魔化しているようですけれど、私は騙されませんわよ!」
「はぁ……」
「あなたの正体は知っていますのっ」
「はい?」


そんな際どいことを言ってもぼんやりと首を傾げるだけの直姫に、りよは柳眉を逆立てて言い放った。


「あなた本当は女なんでしょう!?」
「え。うん」


平然とした顔で、それがなんだとばかりに頷く直姫。

聖や准乃介たちはりよに対しての興味が薄れたようで、ゲームをしたり雑誌を読んだり好き勝手なことをしていて、彼女の言葉を聞いている様子はない。


「どうして驚きませんの!?」
「いやあ、だって、知ってるし」
「入学して早々ぶっちゃけられたからねぇ」
「言うつもりはなかったんですけどね……」
「この子ったらもう、変なところで抜けてるんだからにゃー」
「詰めが甘いよね」


当然といえば当然だが、りよにとっての切り札だったのだろう。
直姫にはとても不利な暴露話になると思っていたぶん、いまいちのリアクションのなさに、彼女の苛立ちは募るばかりだ。

「もう!」と癇癪を起こすりよに少しは溜飲が下がったのか、准乃介が雑誌から目を上げて言う。

ちなみに手にしている雑誌の表紙は、彼本人だ。


「BTSっていったら、日本のでっかい文房具メーカーじゃん? 十年ちょっと前に海外にも進出したって話だったけど、イギリスだったんだっけ」
「五歳からイギリスに住んでますわ」
「にゃるほどー。それで日本人だけど留学生にゃろね」


うんうんと頷く恋宵の向こうで、聖が「はーい」と手を上げる。