「なんだ直姫、待ってたの……あれ、志都美さん? 聖先輩と恋宵先輩も。まだ開いてないんですか?」


真琴が小走りで来たと思えば、反対側の階段から上ってくる、紅と准乃介。


「あれえ、夏生まだ来てないの?」
「なに? あいつ、またか……」


いつもの間延びした口調の准乃介と、鞄から生徒会室の鍵を取り出す紅。
少女の毒舌は、その三人にまで牙を剥いた。


「やっぱり芸能人ってカメラ越しの方が良く見えるんですわね……本物を見るとがっかりしますわ」
「え」
「あらいけない、イギリス人と日本のモデルの体型なんか、比べちゃいけないかしら。貴方、もう少し体鍛えたほうがよろしいんじゃなくて?」
「へ? 俺?」
「貴方、俳優の佐野真琴でしょう? 同じクラスね……イメージと全然違いましたわ。もっとクールな人かと思ってましたのに」
「し、志都美さん?」
「それと……貴女?」


振り返って視線を突きつけた少女を、紅は眉を寄せて、少し引き気味で見た。
それほどまでに、少女の清楚な外見と物言いが一致しなかったのだ。

身長はどちらもそれほど変わらないが、そのあまりの勢いと迫力に、心なしか紅が上目遣いになっている。


「な、なんなんだお前、」
「貴女がこの学校一の美少女なんですって? 全く、信じられませんわ……生徒間にファンクラブまで作られるという悠綺高校も、意外と低レベルでしたのね」
「は……はあ、……」
「……ちょっと、君いい加減に」


少女の辛口にたじたじの紅。
そして紅に対する暴言で、准乃介が珍しく苛立ったように頬を引き攣らせたところで、背後から爽やかな声が聞こえた。