「すいません、生徒会役員以外をここに入れるわけにはいかなくて……誰に用事ですか? 今来ると思いますけど」
「、な……」
「あれー、直姫! 早いじゃん、どしたの」


口を噤み、目尻を吊り上げて直姫を睨む彼女が、何か言いかけたときだった。
静かだった廊下に、突然明るい声が響く。

それはちょうど恋宵と並んで階段を上がって来た、聖の声だった。


「わ、誰その子! 美人さんー」
「あ、先週マチルダ先生が言ってたにょろ! イギリスから来たんだっけろ?」
「そんなこと言ってたっけ?」
「ひじぃ聞いてにゃかったの?」


独特の間とテンションでにこにこと繰り広げられる会話に、直姫が口を挟む機会をなくしていると、不意にそばに立つ美少女が口を開いた。


「Inoさんに……、KNIGHT(ナイト)の柏木聖さん?」


目を細めて、皮肉っぽく片方の眉を吊り上げる仕草。
様になってはいるが、あまりに不躾だ。


「テレビや雑誌で観たことはありましたけど、実物はずいぶん軽そうですのね……頭とか」


聖は笑った顔のまま動きを止めた。
呆然として少女を見つめるそこへ、他の役員たちがいつもより遅れて集まり出す。