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朝のホームルームを完全に眠って過ごしてしまった直姫は、その後も一日ずっとぼんやりとしていた。
浅い眠りでは、いくら寝ても目が覚めきらないたちなのだ。

眠そうにとろんと蕩けた目元を一瞥した真琴に、今日だけで何度「もう……」と言われたか知れない。

その真琴に、職員室に用事があるからと言われたので、直姫は一人で生徒会室に向かっていた。


(やっぱあの連作を一気に観るのは厳しかったよなあ……)


放課後になってもまだ小さな欠伸を噛み殺しながら、北校舎の階段を上がった。
なんの気なしに、蔦と鳥の装飾を彫り込まれた手摺を眺めながら歩く。

そして、三階の真ん中の部屋の前に辿り着くと、真鍮のドアノブに手をかけた。

かけたのだが、かしゃん、と途中でつっかえるような感触がして、それ以上開かない。
鍵がかかっているのだ。

早く来すぎたか、と思ったが、左腕を軽く上げて腕時計を見ると、時間はいつもよりほんの十分ほど早いくらいだ。
珍しく直姫が遅刻しなかっただけでは、ないらしい。


(先輩たち、まだ来てないんだ……)


生徒会室の鍵を持っているのは、夏生と紅だけだ。

職員室まで行けばもう一つあるが、中庭を挟んだ反対側の南校舎まで取りに行くなんて、あまりに面倒である。
それに、入れ違いにでもなったら無駄足だ。

彼らが来るまでは、この場で待っているしかあるまい。
直姫は壁に背を預け、待つ姿勢に入った。

すると、唐突に声が一つ、かけられた。