――教室のあちこちで聞こえはじめた小声の会話は、非の打ち所のない容姿や恵まれた境遇など、全て彼女に関するものだ。

クラス中から注がれる羨望と好奇に満ちた眼差しに、りよは満足そうに頬笑みながら、教室を見渡す。

しかしある一人の男子生徒のところで、その視線はぴたりと止まった。
りよには微塵も興味を示さず、それどころか彼女に旋毛を向けて堂々と眠りこける、その姿。

りよの目元に一瞬、冷ややかな色が浮かぶ。
そして誰にも聞こえないような小さな声で、呟いた。


「相変わらずの無関心っぷり……西林寺、直姫……」