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それから週末を跨ぎ、直姫は相変わらず気だるげな月曜日。

教室に入った途端、妙にしおらしい雰囲気が彼らを取り巻いていることに気付いた。
後ろの席に振り向いて、真琴に話しかける。


「おはよ、真琴」
「あ、おはよー直姫」
「なんかあったの?」
「うーん、実はね……」


真琴の話を聞いて、直姫は驚いた。
驚いたとはいっても、一緒にいる時間の比較的長い真琴でさえ、目を見てやっとわかるかわからないか、というくらいしか、顔に出てはいないのだが。


「え……城ノ内さんが転校?」
「うん。なんか、絵の勉強がしたいからパリの学校に通いたい、って。知ってた人もいたみたいだけど、みんな急なことでびっくりしちゃって」


高校受験の頃からすでに迷ってはいたが、つい二週間ほど前、パリに住んでいる親戚から正式に招待が来たため、それで決心がついたらしい。
土曜の午前中の飛行機で、パリへと旅立ったそうだ。


「親睦会もあって忙しいだろうから送別会はいらないって、本人が言ったらしいよ」


発表会は、三日前。
直姫の机にあの手紙が入っていたのは、その一週間ほど前のことだ。

親戚からの招待と、親睦会での劇にキスシーンがあることが明らかになった、恐らく脅迫状を書いたであろう時期とが、わずか数日違いなのが少し気になる。
直姫へあの手紙を書いた時には、すでに、パリ行きが決まっていたのだろうか。