勘違いだったと気付いたのは、彼の父親の誕生パーティーに招かれた、三年前のあの日。
昔、女の子同士で楽しそうに遊ぶ直姫と夏生を見て、自分も女だったならあの輪の中に入れるだろうに、と、幼心に嫉妬心を抱いていたというのだ。
女の子だと思っていた夏生を好きだったのだから、恋愛対象はあくまで女性である、ということらしい。
確かに、先日直姫と言い合いになっていた時も、そんな性癖はない、と口走っていたが。
それならばなぜ、わざわざそんなふりまでして日本に来たのだろうか。
その真相を知った時、すべては根本から覆されるのである。
『あなたを好きと言った方が、日本に来やすいと思ったの。私も、あの子と……おんなじだから。』
おんなじ──とは。
怪訝な顔をした夏生に、里吉は言った。
『わかるでしょ。“いない”ことになってんの、“さときち”は。趣味だけで女装(こんなカッコ)してるわけじゃないのよ』
それに、直姫が自分のことをまったく覚えていないのも腹が立つ。
おまけにその彼女は今、男として生活しているというではないか。
自分の父ですら少女としての彼女を、覚えていなかったのだ。
だが父の友人、紀村悠子に聞けば、一部の生徒は直姫の正体を知っているという。
それならば、自分が女としての方が、こちらでは近付きやすいというもの。
里吉の理屈は、夏生には到底理解できないものだった。
それに、そういうことだとするなら、つまり。
『……ねぇ、それ、もしかして、』
『そうよ、私が好きだったのは』
あなたじゃ、ない。