「まーなにはともあれ、結果オーライ?」
「どこが?」
唯一夏生だけが、相変わらずの仏頂面で言った。
結局、今回もっとも割りを食ったようになってしまったのは彼である。
留学生の女装っ子に懐かれたと思ったら、騙されてデートに連れ出されて、そこで突然姿が消えるというハプニングが起きて、けれどそれは狂言誘拐事件で。
おまけになぜだか、里吉のぶっ飛んだところが、すべて自分のせいにされている。
「俺ばっか最低な奴みたいに言わないでよね」
「いやいや、十分ヒドイじゃん? ロリ直姫とうっかり気合っちゃってたのに、そのことすっかり忘れちゃってるし」
「そーよ、そのせいで女の子ににゃったら仲良くなれると思って、サトちゃんがああなっちゃったんでしょお?」
「覚えてないのは仕方ないでしょ」
「それについては自分もさっぱりですし」
「都合の良いことしか記憶しないのか、お前らは」
そう言って紅が、呆れたように溜め息を吐く。
都合の悪いことを忘れられるのなら、いっそこの人たちと初めて会った日から今日までのことを、全て忘れたいものだと、直姫はこっそり考えた。
「つーかさぁ」
そんな時、聖が言った。
なにか考えながら口を開いたのだが、ろくでもない予感しかしない。
「じゃあ、サトちゃんがそっちの道に目覚めちゃったのって、直姫にも原因があるわけじゃね?」
「は?」
剣呑な声を上げると、直姫こわいこわい、と、真琴が小さく言う。
どうしてこの人はいつもこう余計なことばかり言うんだろうか、と考えたことは、口にこそ出さなかったものの、その不機嫌な雰囲気から周囲には駄々漏れな彼女であった。