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原作はシンデレラ。

誰もが知るストーリーに独創性を、という点では、この親睦会の実行委員を買って出た麗華嬢が、脚本も担当するらしい。

いわく、「舞台は現代の日本。とある財閥の会長が開いた社交パーティーで、そこのご子息と、ひょんなことから紛れ込んでしまった庶民の少女が出会い、一瞬のうちに恋に落ちるのです!」ということだ。
続く言葉はあまりに長くなったので、直姫は話半分にしか聞いていなかった。

その力説の内容や話の強引さに一抹の不安は感じるが、多分、おそらく、きっと大丈夫だろう。
こうなったらもう、流されるまま流されてしまえ。

抵抗も面倒になった直姫は、周囲の浮かれたテンションに身を任せることにしたのだった。


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そして脚本は書き上がり、三日後から稽古が始まった。


「奈緒子!? 私は朝はコーヒーじゃなく紅茶が飲みたいと言ったでしょ! まったく……何度言えばわかるの、本当に使えない子ね!」


声高らかに直姫演じる奈緒子を罵倒するのは、脚本兼、継母・礼子役の大友麗華嬢だ。

実行委員と脚本を引き受けると言ってしまってから配役を決めたのだが、例によってまた、くじの箱から自分の名前の紙を抜いておくのを忘れていたらしい。

おかげでずいぶん多忙になってしまっているが、それでもすべてを完璧にこなし、細やかな心配りまで行き届いているのは、見事の一言に尽きる。

将来の夢は映画の脚本家だと言っていた彼女だが、その堂々とした演技に、むしろ女優の方が性に合っているのではと思ったのは、直姫だけではないだろう。