それは、メールに添付された画像のせいだった。

携帯電話のカメラで撮影したような画質の粗い写真。
写っているのは里吉の学生証と、固そうなロープで縛られ、痛々しく赤い痣がついた手首だった。

真っ白で華奢な腕は、か弱く可憐な少女かと見紛うほど。
しかし意外に(当然といえば当然なのだが)骨張った手の甲、親指の付け根辺りの見覚えのある黒子が、それが少女の姿をしたあの少年であることを証明している。

恐らく、犯行の信憑性を示す目的で送りつけてきたものなのだろう。
尋常でないその画像が、視覚的な動揺を誘ってくるのだ。


違和感だらけの誘拐事件。
だがその正体がいまだ掴めずに、頭を悩ませることしかできなくて、それがもどかしくて、悔しい。

自分まで頭を掻きむしりたい気分になってきて、直姫は額を手を当てた。
息を深く吐き出して、ゆっくり二、三度瞬きをして、ふと直姫の目についたのは、白だった。

紅のパソコンの画面は、メールを表示したままになっている。
それが、視線を移した一瞬だけ、人工的な純白に見えて、眼球の奥が痛んだ。
目を細める。

犯人からのメール。
パソコンのメールアドレスを割り出す方法は、五万とあるらしい。
意味不明な取引条件。
高校生に対して、車と食料と、五千万円の要求。
メール以外に犯人の手掛かりは、里吉が夏生とのお忍びデートで行きたいと言った遊園地で直姫と恋宵が渡された、他言無用の意を示した手紙が一枚だけ。

直姫は、声を出した。


「あれ?」