身代金に欲を出さないならば、他に考えられるのはそれしかなかった。
金を取るためではなく、他の要求があって、誘拐したのだ。

だが今のところ彼らのもとには、車の食料と金の要求しかされていない。


「だとしたら、なに……?」
「サトちゃん本人? 人身売買とか」
「こんな足の付きやすい人狙うわけないですよ」
「サトちゃん個人への恨み……だったら、誘拐じゃないか」
「今日なら狙撃でもなんでもするチャンス、いくらでもありましたよね」
「五千万円で帰してくれるとも限らないんじゃありませんか? これから先もまだ身代金の要求があるのかもしれません」
「それはないって……もしそうなら、最初は金と食料だけにしとくっしょ。まだ直接接触する時期じゃなくない?」
「直接受け取る気がないんじゃないか?」
「あ、よくドラマで見るにゃ! 橋の下に落とせってやつ?」
「それは無理です、車は人間がいなきゃ受け取れないから、どうしてもすれ違わなきゃいけません」
「うううううにゃあ……」


恋宵が、頭をがしがしと掻き回して、唸った。
すっかり行き詰まってしまって、考えすぎで熱でも出そうだ。
しかも七人とも、考えることにいまいち集中できないでいる。