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「四人乗りの車一台、食糧と……現金五千万円、か……」


目線をずらせば、宙にモニターの斑な残像が見えるんじゃないかというほどに、読み返した。

件名はあまりにも簡潔に、『要求』とだけ書かれている。
本文も箇条書きに近く、単語だけ並べて作ったような印象で、文章からなにか判断することもできない。
送信元はもちろん不明だ。

ある意味で、一番予想外な連絡手段だったかもしれない。
最初の脅迫状が、手紙を手渡しなんてアナログなものだったせいだろうか。

そのために、困惑と動揺を隠すことができずにいた。
真琴はきょろきょろと先輩たちの顔を見回しているし、聖は立ち上がって、常に体のどこかを動かしている。
ち、と誰かの舌打ちが聞こえた。


「アドレス、暗号化してるみたいだねえ……こんなんじゃ警察でもない限り、誰がどこから送ってんのかわかんないかな」


画面に視線を固定したまま、准乃介が呟く。
どうやらさっきの舌打ちも、彼がしたらしい。
あまりそういう――負の感情を表すところを見たことがなかったので、直姫は多少驚いた。

聖はうろうろと檻の中のトラのように歩き回っていたが、立ち止まって言う。


「え、アドレスからそんなことわかるんすか?」
「合法じゃない方法でなら、わかんないことなんかないよ」
「えっ」
「これだって、紅名義だってわかってて、アドレス調べられたんじゃない? サトちゃんにはパソコンのアドレスは教えてないでしょ」
「あっ、ああ、うん」
「じゃあ……俺たちのこともバレてるってことっすか?」
「それがわかんないんだよねぇ」


准乃介が、難しげに眉を寄せる。