一度目は、反応がなかった。
様子のおかしいことに気付いて、もう一度声をかける。
すると彼女は、ブリキ人形のようなぎこちない動きで、直姫に振り返った。


「どうしたんですか?」
「……直姫、」
「え?」


またゆっくりと自分から移って行った視線を、直姫は追う。
向かった先は、パソコンの画面だった。

目に痛いくらいに、真っ白に明るく光っている。
サイズのそれほど大きくない文字が並ぶ、メールの文面。
座ったまま手を付いて紅のほうへ寄って、目を細めた。
光に慣れた目が、件名の文字を認識する。

そして、喉から、声が出た。


「……あ、え?」


勢いよく夏生に振り返った。
切れ長の目が、少し見開かれる。
直姫の顔が、体調でも悪いのかと疑うほどに真っ青だったからだ。
眉を寄せ、彼女の一連の不可解な言動の意味を、たった一言に集約して、夏生は問う。


「直姫?」


言葉の足りない先輩に、直姫も、言葉足らずに答える。
真っ黒な瞳には、困惑が乗っていた。


「メール」
「メールがなに?」
「犯人からです!」
「は?」
「はんに、……犯人からの、メールです……!」