「『口外ムヨウ』、かー……厄介だねえ。」
本当にそう思っているのか、いつもと変わらない間延びした口調で、准乃介が言った。
長い指には、直姫がうさぎの着ぐるみに渡された、あの手紙が挟まれている。
「『口外』ね……『外』、の定義とは」
「さあねぇ。ボディガードさんたちはどうにゃろねえ? てゆうか帰ってくるの遅くにゃい?」
「あの人たちはなあ……ちょっと胡散臭いし、あんまり派手に動かれたら困りますよね」
「ううん……こういう場合、とりあえずあの場にいた人間以外には話すな、てことじゃないスか?」
動揺を見せずにいつも通りの様子なのは、無意識にか、それとも少しでも緊張を和らげるためだろうか。
こんな状況で交わされるには、あまりにふさわしくないトーンの会話であった。
だが、視線は絶えずお互いの間を行き交っているし、手元にも落ち着きはない。
指を組んだりほどいたりを繰り返す聖が、夏生の肩越しに、パソコンの画面を覗き込む。
あれから数十分。
七人は、六時の閉館のアナウンスに追われるようにして遊園地を出て、また石蕗邸の離れに戻って来ていた。