「決まりましたわ! 大まかな配役は、今決めてしまいましょう!」


定期発表会まで時間がないからと、進められるところまで進める気らしい。

真琴王子を期待する彼女らの、個人的な趣味が多分に入った議論と検討の結果、演目は知らぬ人のいない童話、『シンデレラ』に落ち着いた。
(意見は落ち着いたが、話し合いには全く落ち着きはなかった。)

黒板に書かれた文字がすべて消されて、シンデレラ、と大きく書かれる。
シンデレラ、王子、魔女、継母、二人の姉、家来など、代表的な登場人物も、琢己によって書き出された。

それを見て、「シンデレラって登場人物そんなにいないよね」と呟いたのは、直姫だ。


「男子なんか三人くらいじゃん。あとはほぼエキストラか……出ても一瞬だな」
「なんか腹立たしい、その呑気さ……」
「気にすることないよ真琴」
「もう。直姫が家来になればいいのに」


楽そうな脇役中の脇役、例えば舞踏会の参加者Aなんかでこのかったるい行事をのらりくらり乗り越えようという、ものぐさ直姫の怠慢な姿勢が、不運を呼び寄せたのか。
はたまた、直姫のくじ運が、悪い意味で良かったのか。

この学校ではイレギュラーなんて自分以外にも沢山いるのだということを、この直後、思い知らされることになる。