「本当にいつも起きるの遅いんだから」
「全然遅くないよ~…もー…」


母がドカドカと部屋に入り、
東側のカーテンを開ける。

少しきつい朝日が部屋を明るく照らすが
今は迷惑極まりない。


「桜なんてとっくに出たわよ」

「桜は部活の朝練でしょ…」

「今日朝練なんかないわよ。
いいから早くご飯たべちゃってよ」



劣った姉に優れた妹。

それが我が家、保科家の日常。


親もそういう扱いになるし、
私たち姉妹の雰囲気もそうなる。


もちろん周りも。











「いってきまーす!」

「ちょっと!卵焼き!!」

「時間ないからいらない!!」

「だから早く起きなさいって言ったでしょ!」



母の怒鳴る声を背に玄関をとびだす。













「ツグミ~!!」

「あ!おはよう藍ちゃん!」


家から少し離れた公園の前。

そこにいるのは緩やかに笑い
ショートのゆるゆるパーマを
なびかせる天使。

いや、私の友達の藤野 ツグミ。



学校に一人はいるようなふわふわしてて
悪い噂を聞かないような子だ。


「藍ちゃんの妹さっき見たよ~。いつもと違う髪型だったね。」

「え…!?あ、そうだっけ?」

まさか桜の話題が出るとは。


もしかすると私より
ツグミの方が桜について詳しいのでは
ないだろうか。