「もしもし?杏?今どこ?」
電話の相手はジュリア。
「ごめん、もうすぐ着く!」
「もうみんな来てるよ?主役なんだから杏が遅れちゃダメじゃない!」
この角を曲がるとすぐにジュリアの家。
「うん、ごめん。あっ見えた!」
「あ~杏!」
ジュリアは家の外に出て、キョロキョロと私を探していた。
私を見つけたのか、こっちに駆け寄るジュリア。
それと同時にブツッと通話が切れる。
「もう!何してんのっはやく行くよ!」
「う、うん」

階段を上り、ジュリアの部屋の前に立つ。
部屋の中からは何も聞こえず、シーンと静かだ。

ガチャッというドアノブの音と共に、クラッカーの音が響く。
パーン
パーンパーン
パーン
そこには、学校の友達や、たくさんの私を祝ってくれる人達。
うれしい。
部屋の中は、きれいに飾りつけされていて、壁に貼ってある紙には『杏 17才 おめでとう!!』の文字。
それを見ていると、なんだか涙が出てきた。
「あ~!みんな杏を泣かしちゃダメだよ~」
「杏、泣くのはまだ早いよ~」
「杏、ほら!座って、座って!」
みんなの声が、よけい泣けてくる。
「うぅ…う゛~…!!」
「杏、ほら!いい加減泣きやめよ!」
「う、うん」
テーブルの前のクッションに座り、ジュースやお菓子がいっぱい並んだテーブルを眺める。
そういえば…さっきまで居たはずのジュリアがいない。
?…どうしたんだろ…。
すると、部屋の入口が開き、何やら大きな箱を持ったジュリアが部屋に入ってくる。
「?」
その箱をテーブルの上に置くと、ふたの取っ手に手を掛ける。
「いくよ~?」
「「「せ~の‼」」」
その声と共に、ジュリアがふたを開ける。
「じゃ~ん♪」
「わぁっ‼」
ソレを見て、私の視界はいっきに込み上げてきた涙でさえぎられる。
生クリームの甘い匂い、真っ赤なイチゴの中心に『杏 HAPPY BIRTHDAY‼』と書かれた板チョコ。
そう、そのものとは、手作りのイチゴのホールケーキ。
「うぅ…ありがとう!みんな、みんな…ホントありがとう‼」
「どうだ、驚いたろ?」
「うん‼」
「みんなでがんばって作ったんだからね?」
「うん、うん‼」