高級取りではあるが、セックスが下手そうな男と彼女は結婚する。


失敬、育ちが良く社会的立場も申し分ない、優しそうな男性と結ばれるのだ。


正樹の役目は終わった。


一抹の淋しさはあるが、こればかりは仕方がない。


手が届かなかった永遠の女性として、菜々子の存在は記憶に刻まれていくだけだ。


実際この二ヶ月間、彼女と会っていない。


婚約が決まる前は何かにつけ夕食を共にしていたが、式の準備で忙しいのだろう。


彼女が連絡を寄越すことはないし、正樹から電話をかけることもない。