「パパはもっと怒るべきだと思うけど!
娘が手出されたんだよ?! 激怒モンでしょ?
しかも婚約者がいるのに!」
「パパも普通なら怒るんだけどなぁ」
「嘘ばっか。娘よりも仕事が大事なんでしょ」
「嘘じゃないよ。
咲良が大事だから……いや、咲良と葉山くんが大事だからパパも強く言えないんだ」


パパの言ってる意味が分からない。
本当なのか嘘なのかも分からなくてじっと見てると、パパは困り顔で微笑んだ。


「うちで、Sフーズのコンビニデザートを担当する予定なのは葉山くんなんだよ」
「……え?」
「葉山くんには今までも大きな仕事を任せてきたけど、今回はその中でもとびきり大きな仕事だ。
これが成功すれば、周りも今以上に彼を認めるはずだし、彼自身、やる気でいてくれていているんだ」
「椋ちゃんも知ってるの?
でも、椋ちゃん、先生の顔見ても何も言わなかった……」
「まだ顔合わせもしていない段階だから、葉山くんは誠吾くんの顔は知らないよ。
来月、うちで第一回目の会議を開く予定でいるから、そこで初めて顔合わせする事になる。
もちろん、誠吾くんも葉山くんの顔は知らない」