車が止まったのは、椋ちゃんのマンションの駐車場だった。
椋ちゃんは、車に乗った時からずっと無言だから、その理由は分からないけど……。
多分、先生につけられたキスマークの事を説明させるためだと思う。
まさか浮気だとか思われてたらどうしよう……。
そんな不安がよぎって、マンションに入ったところで思い切って声をかける。
「椋ちゃん、あたし、やましい事なんかしてないよ?
これは、今日の授業中、急に机に押し付けられて無理やりつけられただけだし。
なんか、“ムカつく”とか言って強引に」
玄関のカギを閉めた椋ちゃんが向かったのは、寝室。
その後ろをくっついて歩きながら説明する。
「っていうか、あの人おかしいんだよ。変態っていうか、ドSで。
これも、深い意味があるわけじゃなくて、嫌がらせの類だし。
普段からイジワルだし失礼だけど、今回はホントに……って、なんか説明してたらイライラしてきた」