けどそんな事言えなくて黙ると、椋ちゃんは小さなため息をついた後、落ち着いた声で言う。


「俺は、誰かに見られたら困るとか、そんな軽い気持ちで咲良と付き合ってるわけじゃない」


椋ちゃんから甘い言葉をもらう事には、まだ慣れてなくて。

だから、不意打ちに言われると、頭の中がお花畑状態になっていちいち思考が遮断される。

そのせいで返事が遅れたあたしに、椋ちゃんが続ける。


「それに、真剣な付き合いなんだから周りの目をそこまで気にする必要はない。
確かに、社長の娘だとか年の差だとかを言うヤツはいるかもしれないけど、一部だろ」
「……須田さんもそう言ってた気がするけど。
でも、椋ちゃんが、制服好きのオタクみたいに思われて変な目で見られたりとか、ロリコン扱いされたりだとか。
そういうのはやっぱり会社での評価が落ちちゃうし」
「……多分、咲良が思ってるほど会社員は暇じゃないから。
そんな噂、もし立ったとしてもすぐに消えてくよ」
「でも……」