椋ちゃんは、呆れたみたいに笑いながら頷いた。
「これでも色々葛藤はしてたんだ。
けど……前にも言ったけど、俺の世界から咲良がいなくなるなんて、無理なんだよ」
「椋ちゃん……」
「突き放したって壁作ったって、咲良は平気でそれをぶち壊してくるんだから。
俺のささやかな抵抗なんて、咲良を前にしたら意味がなかった」
なんか、ロマンチックな雰囲気だったのに。
椋ちゃんがからかうみたいに笑うから、不貞腐れて返事をする。
「……ごめんね、タフで」
「いや、おかげで俺も踏ん切りがついたし」
「踏ん切り?」
「咲良の未来の選択肢を減らす分、俺が幸せにしてやればいいって。
社長の事も……咲良が幸せそうにしてる姿を見せることができれば、自然と解決する事だろうから。
もちろん、納得してもらえるように、俺にできる最善の努力をする」
「椋ちゃん……」