さっきまでの勢いがどんどんなくなって落ち込んでいると、Yシャツになった椋ちゃんがポンって頭を叩く。
ゆっくりと顔を上げると、優しく微笑む椋ちゃんと目が合った。
「でも、そんなの考えるだけ無駄だった。
転勤の話が出た時、咲良の未来や社長の気持ちを何度も考えたけど……。
俺はやっぱり、咲良と離れるなんて考えられなかったから」
「……ホントに?」
「恋人としてとか妹としてとか。
咲良の気持ちに応えるかどうかは悩んでたけど、それはどっちにしても咲良が傍にいるって事が前提だった。
だから、そんな悠長な事を考えられてたんだ。
離れる事になるって分かって……手離したくないって強く思った」
「……あ、だから焦ったの?」
『俺の中で、せめて高校卒業までは、咲良の気持ちに応えないって決めてたんだ。
なのに、焦って手を出したりして……』
確かそう言ってた事を思い出す。