「ご褒美待ってる猫みたいだな、咲良は」
向けられる無防備な微笑みに、ドキンと胸が跳ねる。
もう何度も見ているハズの笑顔なのに、いまだにあたしの胸は毎回新鮮に涼ちゃんに恋をしている。
自分でも呆れるほどに何度も、何百回、何千回と。
同じ人相手に恋に堕ちた回数だったら、ギネスを狙える自信がある。
「待ってたらくれる? 飼い主の椋ちゃんからのご褒美。
希望なら、一個だけあるんだけど」
「残念。待ってても咲良が望むようなご褒美は出てこないよ」
悩殺できないかなって見上げるようにして言ったのに、スルリと交わされる。
精一杯の誘惑を椋ちゃんが涼しい顔して笑うから、不貞腐れてぷいっと顔を背けた。
「待っててももらえないの分かってるから、頑張って自分からもらいに行ってるんじゃない。
それなのに頑張ってもちっとも上手くいかないし、イヤになる」
笑う椋ちゃんがベッドから下りる。
そして、ベッドサイドのテーブルから眼鏡を取ると、そのままあたしの横を通り過ぎた。