「え、なに?」
「……いや、続けて」
「あ、うん」
腰のあたりに膝立ちになったまま、椋ちゃんのシャツのボタンに手をかける。
ボタンをふたつ外したところで、椋ちゃんを見た。
「ここまで」
返事の代わりに返ってきたのは、深いため息。
額に手をあてた椋ちゃんが、手の隙間からあたしを見る。
「……おまえの彼氏やっててくれた男が、この体勢で襲い掛からなかったのが不思議だよ。高校生だろ? よく我慢したな。
咲良から襲ってるし」
「だって、襲われそうになったから……。
自分から仕掛けた方が怖くないかと思って、それで……。
それに、椋ちゃんを忘れなきゃって必死だったんだもん」
きゅって、唇を噛み締めながら言う。
その時の気持ちを思い出すだけで苦しくて、胸が痛くなる。