耳元でする、椋ちゃんの声。
少しかすれて聞こえる声が、愛しくて仕方なかった。


「嫌いだなんて、言えるわけないだろ……。
あんなお願いするなよ。
必死で逃げてきたのに……これで全部台無しだ」
「……椋、ちゃん?」
「俺の負けだ」


混乱してた思考回路。
だけど、椋ちゃんの言葉を聞いた途端、それがパって繋がる。

勢いよく振り向くと、困り顔で笑った椋ちゃんが至近距離にいた。


「い、今のって、どういう意味……」
「――こういう意味」


暗闇の中、椋ちゃんの唇があたしに触れる。

身動きとれなくなったあたしを自分の胸に抱き締めた椋ちゃんが、「好きだよ」ってささやいた。