「さあパシ。もう逃げられないぞ」


「おぉおお俺をどうしようって言うんですか!
こんなことしてっ、硬結びとかありえないんですけどっ…!
俺を甚振っても何もでないですよ! マジですよほんとですよ何もないですよぉおお!」


「喧しい! 貴様みたいな奴は一度根っこから叩きなおす必要がある。パシリの分際であんより目立つとは…、どうしてくれようか」


「今の俺はナイーブなんですからっ、そっとしといて下さいよ!」


ブンブンと必死に利き手を振る俺を押さえつける矢島が不意に動きを止めた。

傍観者がいることに気付き、

「見世物じゃないんだが」

あん達の邪魔をするな、言うや否やカーテンを閉め切ってしまう。


刹那、



「ギャァアァア変態ぃいい!」



キヨタが絶叫を上げてカーテンを開けた。

同時刻に矢島の舎弟達が保健室に入ってきて事態は更に悪化。

俺と矢島の拘束姿に絶句した舎弟達がキヨタと同じように悲鳴を上げた。


「あ、あんちゃんに何してるんだよパシィイ! 幾らっ、いくらあんちゃんがカッコイイからってっ、お、襲おうとするなんて人としてどうかと思う!」

「聞き捨てならないぞ谷っ! 俺は被害者だっつーの!」

「俺達の兄貴にっ、成敗してやる!」

「ちょっ、誤解だ! 川瀬!」
 
 
「ケイさんに何してるんだよぉおお! しゃ、舎弟といい舎兄といい、お前等、変態ばっかだぁああ!」

「聞き捨てならないなチビ。あんはこいつを拘束したいと思ってしただけだ」


「それが変態だっつのぉおお! こ、拘束したいとかっ、ギャァアア変態の極み! 今助けますッス、ケイさん―――ッ!」
 
 
ベッドに俺の舎弟と矢島の舎弟達が上がってきた。


おばかっ、そんな大人数でベッドに乗り上げたら軋むだろ!

あ゛、しかも保健室の先生が戻って来てっ……、騒がしいベッドを見た中年の教諭は満面の笑みを浮かべた。


直後、彼女がレッドカードを出したのは言うまでもない。


そりゃそうだ。


病人が寝る場所でこんなに大暴れしているんだから、一発退場は免れるわけなかった。