チャイムが聞こえて来る。
これで助かったと思った俺の考えは甘く、「重傷とか何とか言って」本当は逃げる気だな、と矢島が睨んでくる。
おうおう、逃げる気満々なんだぜ!
逃げるはあったぼうなんだぜ!
心中で言った瞬間、「やっぱり逃げるつもりだったんだな!」と喝破されてしまった。
あっはー、口に出してしまったらしい。
田山大失態、やっちまったんだぜ。
……じゃなくって、ぎゃぁああ! ちょ、矢島っ、ごめんって!
「矢島さんっ!」「根性を叩きなおす!」
―――ドンっ、ドンッ、ギシ!
「い、痛いですって!」「パシのくせにっ!」「悪いことしてないのにぃいい!」「あんより目立つなんざ生意気なんだよ!」
―――ドンっ、ドンッ、ギシ!
「ええい逃げるなら」「ゲッ、な、なにをあぁああ!」「逃げられないよう」「あぁあ包帯がぁああ!」「暴れるな!」「暴れますから!」
―――ドンっ、ドンッ、ギシ…、……、……、ガラッ。
「ケイさんは保健室で休んでいるんっスよね? ヨウさん」
「ああ。気だるいっつってたからな。んー、多分大丈夫とは思うけど、一応売店でゼリー買ってきてやった。ゼリーなら食えないこともねぇだろうし」
「オレ的にぶり返しはないと思いますけど…、ケーイ。大丈夫か? 来てやっ……、はい?」
立ち止まる足音にモトの強張った声音、んでもってビニール袋の落ちる音が聞こえる。
一方の俺と矢島はベッドで大暴れしたせいか、ゼェハァゼェハァと荒呼吸を繰り返して息を弾ませていた。
「こ、これで」
逃げられないと矢島が左の手首を持ち上げる。
半強制的に右の手首が持ち上がってしまうのは向こうの手首と共に縛られているからでして。
俺は痛みに堪えながら半泣きでなんてことをしてくれるんだと声音を張った。
せ、折角患部を包帯で巻いていたのにっ、あろうことかそれを解いて縛り上げるなんて!
なんだよこれっ、ナニプレイ?!
拘束プレイもどき?!