「なんであんより名前が売れているんだっ! パシのくせに、パシのくせにぃい!」
胸倉を掴まれた俺は矢島にがくんがくんと揺すられる。
アイダッ、アイダッ!
そんなに強く揺すらないで!
お、俺、重傷人っ、まだ怪我が完治していなっ、イッデェエ!
ついでに息が苦しいっ、苦しいですっ。
ジリジリと詰め寄ってくる美形不良に俺はタンマを連呼して、どうにか落ち着いてもらおうと躍起になった。
動きを止める矢島は、何か言い訳でもあるのかと睨んでくる。
言い訳もなにもドチクショウもねぇやい!
俺は何も悪いくないっ、名前なんて売れたくて売れたんじゃねえぞド阿呆!
「あ、あの、俺…、ヨウの舎弟なんで自然と名前が売れてしまうんですよ。別に俺は特別なことなんて」
「ということは何か? 荒川が活躍している。だから貴様はのうのうと恩恵にあやかっていると?」
なーんでそうなるんだ!
寧ろとばっちりが、俺にはとばっちりが飛んできてだなっ!
「貴様はそれでも不良か! 人の名前を利用し、その恩恵にあやかっているとは! 不良の風上にも置けない奴だっ」
おーまえは俺の名前を騙ったよな! 忘れたとは言わせないぞ!
偽田山圭太その1事件を起こしたよな!
ちなみにその2は里見達な!
くっそう、どいつもこいつも俺の名前を騙りやがって!
俺の名前を騙りたいなら、まず更生しちまうんだな!
それだけで田山圭太の道は切り拓かれる!
とかなんとか思っている場合じゃない。
なんとかこいつを宥めないと!
「や、矢島さんっ。落ち着いてっ、此処は保健室っ…、静かにする場所です! っ、いや、多分今は俺と貴方様しかいないでしょうけど」
「ならいいな。あんとゆーっくり話ができる」
俺はゆーっくりと寝たいんですけどっ、じゃ、じゃあこれだ!
「あ、アイタタタ…、体が…、お、俺、これでも重傷なんですよ。なので休ませて下さい」
「本当に重傷なのか?」
見りゃ分かるだろう!
この頬に貼られたガーゼと腕の包帯を見てみろ!
可哀想なくらい痛々しいだろ?!
それに胴体には痣やら湿布やら、背中には根性焼きの痕やらっ、俺、鉄パイプで殴られたりもしちゃったんだぜ!
真面目に体が痛いんだけど!
お前だっていっちゃん最初に酷い怪我って言ってたじゃないか!