不貞腐れるヨウに同調しつつ、「里見等は」不良を嫌っているんだよ、と俺は答を返す。

不良そのものに嫌悪と悪意を向けていた。
それは監禁されていた今でもよく憶えている。

妙に不良に執着していたんだよな。
暴行によって失神しかけていた俺に、何度も不良と関わったのが悪いとか言っていたし。


「でも飯は食わせてくれたんだ…、不思議なことに。
里見が持ってきたかは憶えていないけど、んー、なんかゼリーっぽいのを食わせてもらったような。もう記憶があやふやだけど、なんか食わせてもらった憶えはある」


「んなの厚意にもならねぇよ! クソッ、里見って野郎、マジでいけ好かねぇ。裏でこそこそしやがって」


「里見はそういう奴みたいだよ。真杉の事件にも噛んでいるみたいでさ。嘉藤を階段から落としたうんたらかんたらって言ってたんだよな。
これはモトに聞いてみれば分かると思うけど」


「んだと?」真杉の事件、あれは里見の仕業だったのか、怒りの炎を燃やすヨウはますます許せんと握り拳を作った。

舎弟に弟分、そして仲間に手を出したこと。

自分をターゲットにしているわりには周囲から潰すそのいけ好かないやり口、すべてが腐っているとヨウは苦言した。

自分に用があるなら真正面からかかって来いってんだっ、五十嵐みてぇな野郎だとヨウはこめかみに青筋を浮かばせる。

間を置き、「里見は」俺を壊すつもりだったらしいんだ、と奴の目論見を口にする。
 

「きっと再起不能にしたかったんだろうな。どんだけ不良を嫌っているのかは分からないけど、徹底っぷりには恐れ入るよ」


でもあいつは失敗した。

里見は一週間、俺になりすませると目測していたんだ。

情報化社会を逆手に取った現代らしいやり方と思考で計画を企てていた。


一週間あれば相手に多大な恐怖心を植え付け、再起不能に仕上げられると思っていたんだろうな。

だからこそあいつは驚いていたよ。
お前が二日で俺のなりすましを見破っていたことに。
 

一方、俺はザマァだって思った。

あいつ等は不良を馬鹿としか見ていない。

そりゃあ社会から見たら馬鹿かもしれないけど、俺達の繋がりを甘く見過ぎていた。

単に馬鹿してつるんでいるだけだと思ったのかもしれない…、それが失敗の原因だ。


「俺は信じていたよ。ヨウなら、きっと気付いてくれるって。サンキュな」


苦笑するヨウは、「してやられた感はあるさ」だって二日も気付けなかったんだから、と肩を竦める。


「けどケイの言うとおり、里見は誤っていたんだろうな。携帯で済まされる関係とか思ってたのかもしんねぇけど、そうじゃねえっつーの。心外だぜ。舐められ過ぎだ」
  

鼻を鳴らす舎兄に俺は一笑する。