応答がないのにヨウは「俺さ」まだ里見って男、全然掴めてなくてぶっ飛ばせていないんだ。ごめん。と、詫びてきた。

俺が逃げ出したことなんて気にしていないのか、それともどうでもいいのか、本当はそいつをぶっ飛ばして、見舞い品に贈るつもりだったんだと苦笑するヨウの声。

聞こえて来る靴音。


そして目を見開く臆病者。


「でもな」

テメェをリンチした不良達は片っ端から始末したから。ヨウは話を続ける。


「超弱い奴等でさ。ちょっと拳入れたらすぐ伸びるんだ。
弱くね? 俺の舎弟はどんな苦痛にも耐えたのに、舎弟を甚振ったあの不良達は情けなく伸びちまうんだぜ?
超弱ぇ。寄って集って暴行していたくせに、マジ弱ぇ」


ヨウ…。


「ちっぽけだけど、仇は取ってきたから」
 
   
俺って馬鹿だから舎弟のピンチにいつも間に合わなくって。

やれることといったらこんくらいで、マジ情けなくて。

けど舎兄だからさ。
俺はお前の舎兄だからさ。

舎弟のために一旗挙げたかったんだ。

ごめん、遅くなって。
すぐにでも報告したかったんだけど、手間が掛かっちまって。携帯で連絡するよりかは口で直接言った方が安心だと思ってさ。
 
何より俺が直接伝えたかったんだ。これをケイに…、直接伝えたかった。
 


「舎弟の足元にも及ばない奴等だった。畜生な奴等バッカだったよ、ケイ」
 


―――…。
 

この数日、ヨウは俺が避けていたことに気付いていたに違いない。

それでもそれを咎めることなく、仇討ちの報告をして勝ったことを見舞い品として贈ってくる。

毎日のように訪れていたのは、この見舞い品を贈りたかったからだろう。

純粋なヨウの気持ちに泣きたくなった。いや泣いた。

なんで俺、こいつを避けていたんだろう。


喉の奥が痙攣したけど、唾を飲み込んでどうにか抑える。


常識を考えるとここは一言ごめんって言うべきなんだろうけど、ヨウはそれを望んじゃいなさそうだ。受け取ってくれなさそう。

だから別の言葉を贈る。贈ろうとした。
でも声が出ない。どうしても声が出ない。