「サトミカズサとマミヤって奴等。知ってっか? おーっと、逃げようなんざ思うなよ。ンなのセンスねぇぜ。なあ?」
 

ついでに山田健太がストーキングされたんだが、テメェ等の仕業か?

笑顔で脅すヤマトに臼井は勇者魂を見せた。そう、彼は知るかと一蹴したのだ。


ふーん。

鼻を鳴らすヤマトはヨウに視線を流す。


視線を受け止めたヨウは仕方がないとばかりに手先を動かして相手に歩んだ。

逆さに臼井の姿を瞳に映し、右の拳を振り下ろす。

悲鳴にならない悲鳴を上げる臼井の真横に拳を下ろしたヨウは相手を見据え、「まだやりてぇか」低く唸った。


脅しは効果てきめんだったらしい。

臼井はまずヤマトの問い掛けに対して答えた。
 

曰く、山田健太の事件は別の不良チームだと告げる。

詳しいことは聞いていないが、里見上総(さとみかずさ)と間宮航平(まみやこうへい)率いる仲間の差し金だとは耳にしていた。

臼井は淡々と答える。

「山田の事件も関連性があるってことか」

眉根を寄せるヨウの一方でヤマトは続けるよう相手に命じた。


「里見上総と間宮航平率いる仲間は知名度を求める不良達に声を掛け回っているチームだ」

 
知名度が欲しい不良達に片っ端から声を掛け“不良狩り”を決行している人物達だという。

輩が何故“不良狩り”をしているのかは一切の謎だが、輩は不快だと思った不良を消そうとしている。


そのターゲットに選ばれたひとりに荒川庸一と日賀野大和が入っていた。


声を掛けられた自分達も丁度邪魔だと思っていたため、荒川庸一率いる仲間に手を掛けたと鼻を鳴らす。


舎弟を討ち取ったおかげさまで知名度はグンと上がったと皮肉を零す臼井は、これが自分の知っている里見上総と間宮航平の実態だと毒言。

互いの利益のため必要以上の情報は共有していなかったらしい。


「山田健太や田山圭太を狙った理由は一緒だ。奴等は手腕がねぇ。
しかもリーダーに近い存在。二人を潰しておけば、チームは動揺し秩序は乱れる。

チームを解散することも可能だと目測したんだよ。向こうの意見もあったしな」
 

「ッ…、だからケイや山田を監禁したってか? そこまで執拗に嬲ってどうする気だった? 奴等に手腕がねぇことくれぇ分かっていただろ!」
 


「壊す、ためだ」