「言っとくけど、俺、初めてだから上手くできるか分からないぞ。テクニックっての、よく分からないし」


俺の念押しにココロは大丈夫だと言わんばかりにこくこく頷く。

「わ、私…」ケイさんの初めてになれて光栄です、とか…、言われてしまい、それは使う場面を間違っているんじゃないだろうかとツッコミたくなった。

確かにヤーらしいことと言えばそうなんだけど。でえーぷでそれを使うべき発言なのだろうか。

分からない、お子様な俺には分からないよ!
 

「じゃあ取り敢えず、飴玉でも舐めようか」


腹を括った俺はココロに飴玉を提供してくれるよう頼む。うんっと頷く彼女は、五種類味があるのだと教えてくれた。

苺、蜜柑、青りんご、メロン、ソーダの五つあるそうな。

じゃあ俺はソーダを貰おうかな。彼女から受け取り、味のついた砂糖の球体を放る。

ココロはいそいそと苺を口に入れて、仲良くごろごろと飴玉を転がす。

その間、一切会話が飛び交わなかったのは口が忙しいせいじゃない。

緊張のまま飴玉を舐め切って、準備は整ったとばかりに視線をかち合わせる。


「よ、よし。ココロ、準備はいいか?」

「は…はい!」


妙にココロの声が上ずっている。俺もきっと情けなく緊張しているんだろう。

だってしょーがないじゃないか。

人のべろとちゅーするんだぞ。
絡めたりしちゃうんだぞ。

未知な世界じゃんかよ!

片方の口内にべろを突っ込むんだよな。こういう場合は俺が彼女の口内にレッツトライするわけで。

ココロは俺のべろをウェルカムするわけで。


……き、き、緊張で胃が捩れてきた! なんだこの似非エッチムードは!


んじゃあ早速…、俺はココロの頬を包んだ。

ビシッと固まっているココロにリラックスだと声を掛けるけど、ムリムリと目で訴えれてしまう。

で、ですよねぇ、俺も緊張で死にそう。
さっきまで散々キスしていた奴が思うことじゃないけどさ!
 

「えーっと確認のために聞くけど、俺がココロの口内に飛び込む。で、OKですか?」

「お、オーケーです! ちゃんと苺味になっているかと」

「ははっ、俺はソーダだよ。…ん? あれ…、苺とソーダって合わせるとナニ味になるんだ?」

「そ、それは多分…苺ソーダ…じゃないかと? 美味しいんでしょうか?」


一旦姿勢を戻して俺とココロは腕を組む。

「同じ味にするべきなのかな」

味が混ざると化学反応を起こさないだろうか、俺は素朴な疑問を投げかける。

苺ソーダ味、悪くはないと思うけど、でえーぷから生まれる苺ソーダ味とは如何なものなのだろうか。