「たださ、そのハジメ達の話を聞いてココロ、シたいのかなぁって。雰囲気が、そう物語っていたっていうか。なんというか」


ポッポッと頭から蒸気を出すココロは、「け、ケイさんは!」どうなんでしょうか、と上ずり声で尋ねた。

ずるいなー。俺が先に質問したのに。

上体を起こした俺はちょっち唸って、興味がないって言ったら嘘になるけど…、と口ごもる。

同年代の身近な友達がシたって事実もあるし、俺は舎兄と女性のディープなちゅーを目撃したこともあるし、これでも一端の男だから好奇心は当然ある。

引かれるかもしれないけど興味はあるよ。


暴露に近い心境を曝け出すと、赤面したままのココロがちょっと待っていて欲しいと早口で告げ自室から飛び出した。

断続的に聞こえるけたたましい足音は、廊下を往復して俺の下に戻ってくる。

彼女の手には封が切れられていないファミリーサイズの飴玉袋。


「わ、わぁたしも」


弥生ちゃんの話を聞いて…、その…、一呼吸置いたココロは俺の前で正座して袋を握り締める。


「おぉおんなのこって、き、期待しちゃう生き物なんです。な、なので、も、もしかしたら…、こんな展開があるかなぁって…、その」


キャーッとココロが袋で顔を隠してしまう。

俺もキャーッだよキャー!

まさかそこまで先を見越して、準備されていたなんて。

弥生の入れ知恵、恐るべし。飴玉も弥生が助言して用意させたものだろう。


ったく、恋愛に関しちゃ弥生のヤツ、一枚も二枚もうわてだよな!

此処まで準備されたら、俺、引くに引けないじゃんかよ!

ああもう、聞かなきゃ良かったぜ!


自然と俺も正座に姿勢を切り替えて、ココロの持つ飴玉袋に視線を向けた。


そろそろーっと飴玉袋を見つめるココロは、震える手でそれを開け俺を見つめてくる。


「でえーぷか」「でえーぷです」「一応聞くけどべろちゅーだぞ」「だ、だから飴玉を用意して」「や、ヤじゃない?」「…恥ずかしいとは思います」「あ…、あ゛ー…」「う…う゛ー」「……」「……」「……」「……」
 

ひ、ひ、引けねぇ。

こんなことなら恥を忍んででもやり方を携帯でちゃんと調べるべきだったぜ! どげんしましょ、この状況!

調子ノリ、どうするよ!

一応これはチャンスという場面だろうけど、けどさ!


……ええいっ、しゃらくさぁあい!