ダブルデートの総合評価をさせてもらう。
 
俺的には散々なダブルデート日和だった。

だって席に戻れば、弥生が今か今かと待ち構えていたし、困り果てる話題は吹っかけてくるし、ココロはずーっとダンマリだし。


途中から弥生とハジメのらぶらぶーなおデート話を聞かされる羽目になって、やっぱりこれはダブルデートというより茶会に近いものがあった。

ドーナツ屋に三時間半長居した傍迷惑な客が退席する頃には、すっかり日も落ちていた。


談笑で一日を占めたデートもお開きとなり、俺達は解散する。


とはいえ、弥生はこれからハジメの家に行くらしく、キャツ達は最後の最後まで恋人繋ぎというバカップルっぷりを見せ付けてくれた。

ごちそーさまどころじゃない。
もはやリバースしそうだぜ、俺!
甘いものは暫く、見るのも聞くのも食べるのも堪忍!


痴話喧嘩の絶えないバカップルに溜息をついて俺はチャリの鍵を開錠しながら、ココロに送ると告げた。

うんっと頷くココロは遠慮がちにチャリの後ろに乗ってくる。

俺も必要最低限の言葉しか、今のところ発していない。

しっかりチャリに乗ったことを確かめ、俺はチャリを発進させる。


いつも野郎を乗せているせいか、今日の二人乗りはいつもより軽いものだと俺は思えてしょうがない。ペダルを漕いで街中を横切っていく。


その間、俺達の間に言葉は飛び交わなかった。

お互いに今日のダブルデートに関する感想を各々述べればいいのに、一切の会話もない。

ただただ夜街の一部として溶け込む自分達がいる。

ココロが何を思っているのか、その取り巻く空気じゃさすがの俺も察することはできないようだ。



シャーシャー。

チャリを漕いでひたすら夜風に乗る。

住宅街に入ると、風から味噌汁らしき匂いが漂ってきた。


夕飯時だしな、何処かの食卓で味噌汁が出されるんだろう。

嗚呼、腹減った。
ドーナツは食ったけど、塩辛いものが今は食いたい気分なんだ。和食が食いたい。


現実逃避をしつつ、冷たいアスファルトの上を走って俺は一軒の平屋に到着する。こじんまりとした一軒家はココロの家だ。

ん? 変だな。

ココロの家、明かりが点いていないようだけど。

俺の疑問にチャリから降りたココロが答える。


「じいじとばあば。留守なんです」と。

 
「お友達が亡くなったらしくて、お通夜に行って来ると言っていました。94歳のおばあちゃんだったらしいですよ」


そりゃまあ、長生きしたな。

率直な感想を述べていると、「帰りは十時過ぎと言っていました」ココロが言葉を重ねてくる。