もしゃもしゃっとドーナツを食う俺とココロに、

「間接キスを気にしていないようだしね」

ハジメが意地の悪い追い撃ちをかけてきた。

おいハジメ、露骨に間接キスとか言うなよ。
食いにくくなるじゃないか!

ウワァアアア、変なこと言ってくれるせいでめっちゃ食い辛っ!

まるで下心ありありで俺がココロの齧ったドーナツを食っているような気分になるじゃんかよ!

意識し始めたら食い辛いのなんのって、とりあえず俺の心臓、シャラープ!

バックバクうっるせぇぞ!
 
「食べないのかい?」

捻くれさんの問い掛けに、「うっさい」俺は唸りながら食い下がって、ドーナツを頬張った。気にしない。俺は気にしないぞ、気にしない。


……気にしないようにしているんだから、ココロ、あからさま頬を赤らめてこっちを見るのはやめてくれ。激食いにくい。
 

「ねえねえ。ケイとココロっていつも、どんなデートしているの?」
 

弥生が話題を振ってくる。

これまた漠然とした質問だな。
困っちまうだろ。

「どんなって」

普通のデート?
俺は彼女に話しを流す。

こくこく首を縦に振るココロ。

普通以上も以下もない、二人で外出する普通のおデートをしているつもりだけど。

例えば映画に行ったり、水族館に行ったり、近場じゃ本屋でデートってのもあるけど。


そういう弥生とハジメはどんなデートをしているんだ?
普通以上のデートとかあるのか?

俺達の疑念に弥生が真顔の小声でぼそりと答えた。


「ラブホに行って来ました」と。
 

ぶはっ、俺はドーナツを噴き出しそうになり、ココロはドーナツを持ったまま絶句。ハジメは額に手を当て恥ずかしそうに唸り声を上げた。

え、彼氏がその反応ってことは、まさか…、え、お前等…え゛?!
 

「な、な、ナニしてるんだよお前等! エンガチョしていいか!」

「大丈夫。まだナニはしていないから。ね? ハジメ」
 

未だに地を這うような唸り声を上げるハジメはなんでその話題を二人に話すんだと頬を掻き、深いふかい溜息を零す。