チャリをかっ飛ばして大通りに出た俺は、すぐさまゲーセン隣の裏道を入った。
日賀野チームのたむろ場になら一度赴いたことがある。
確か四丁目商店街外れの地下のバーだ。
ヨウ達と宣戦布告する前はどっかの倉庫だったらしいんだけど、去年正式にヨウ達と宣戦布告してからは地下のバーテンに移転したって健太が言っていた。
なんでもメンバーの中にバーを持つ知り合いがいて、そこを借りているそうな。
今は休業しているらしくて、好き勝手日賀野チームが使っているらしい。
ちぇ、いいよな。
建物内にたむろ場がある奴等は。雨風凌げそうじゃん。
俺達のところなんて冬とかめっちゃ寒いぞ。
だから冬はもっぱらゲーセンに長居するんだよ。
冬の出費は半端ないぞ。
ゲーセンの魅力に負けてゲームをやりまくっているうちにすっからかんになんだからな。
俺はチャリを漕ぎながら、幾度となくカゴの中で飛び跳ねている携帯に目を向ける。着信は来ない。
マジ何しているんだよ、健太。
動揺していても良かったから、もっとちゃんと声を聞かせてくれって。変に電話を切られた方が焦るっつーの。
フルスピードでチャリを漕ぐこと数十分。
俺は静寂な住宅街を突っ切って、風を頬で感じて、髪を微風に靡かせて、大通りへ。
そこから一直線上に道をなぞる。
通行人が行き交いする中、人とぶつからないよう注意を払いながら活気ある商店街を抜けて、ずっと先のさきの逸れに向かう。
店の姿がまちまちに、そしてシャッター通りに差し掛かる頃、俺は商店街外れのとある一角にある地下のバー前でチャリを停めた。
嗚呼、なつかしや。
スプレーで落書きされた洒落た壁さんに、小さな衝立看板さん。
階段と一緒に設置されている手摺を目でなぞっていけば、階段の終尾に重量感ある木造の扉。
おどろおどろしい扉に俺はドッと冷汗を流した。
おぇっ、吐きたくなってきたぞ。
勢い良く飛び出して来たのはいいけど、マジ吐きたい。ひとり勇者になって此処まで来た俺は偉い。
でも怖い、怖い、コワイィイイ! 変に鼓動も高鳴ってきたしさ!
「いやでも行くっきゃないだろ! け、健太のためだ!」
チャリから降りた俺は、携帯を片手に持つと震える体に一喝。